DXクラウドサービス事業会社「UniARTS」発足
AI、IoT技術でビッグデータ解析、結果をサブスクで提供
品質向上、コスト削減、効率化に活用可能
今、あらゆる産業で「DX」が叫ばれ、印刷業界でも「印刷DX」という言葉が流行語のように使われている。しかし、DXは単にデジタル化すればいいという訳ではない。AIやIoT、最先端のデジタル技術を有効的に活用し、品質向上とコスト削減、効率化による納期短縮、そして最終的には企業の収益改善にまでつながってこそ、DXに取り組む「真」の意味があると言えるだろう。
このような中、AIやIoT技術を組み込んだSIMが入ったデバイスを検査装置に設置し、その情報をセキュアな環境でクラウド上に吸い上げ、蓄積したビッグデータの解析結果を誰もが直感的に見やすく、分かりやすい形でサブスクリプションにて提供することでこれらを実現する画期的なサービスが誕生した。
同サービスを提供するのは、2021年11月に発足した、DXクラウドサービス事業会社の(株)UniARTS(ユニアーツ)。画像検査のシリウスビジョン(株)(本社/横浜市港北区、辻谷潤一社長)90%出資のグループ企業となっており、代表取締役に同社取締役の河村拓海氏、COOに同取締役の重田篤史氏が就任。2022年1月1日より、サービスを開始している。
世の中に「検査」で貢献から「品質」で貢献へ
「検査を通してお客様に届けることができる価値を俯瞰して考えたとき、検査機メーカーの垣根を越えて検査機のログを横断的に集めることで、世の中のより多くの印刷物の品質を良くできるのではないかと考えた」
河村社長は、同社を設立した想いについてこのように語る。そしてもう1人、同じように熱い想いを持つのが、シリウスビジョンの社外取締役でもあり、UniARTSに10%出資している(株)アットウェア(本社/横浜市西区)の取締役でもある重田篤史氏だ。アットウェアは約17年前、大手電機メーカーのエンジニアをしていた重田氏が数人の仲間とともに起業。これまでに数々のクラウドサービスやAI関連の開発を手掛けてきた、まさにシステム開発のエキスパートで、河村社長も「重田COOとの出会いがなければ、UniARTSの設立は実現できなかった」というほどだ。重田氏自身も「システム開発については、競合他社に負けない知見がある」と自社の開発力に自信を示す。今回、UniARTSが提供するサービスのシステム開発を手掛けたのも、アットウェアによるものだ。
UniARTSを設立したかった一番の想いは、世の中に「検査」だけで貢献するのではなく、「品質」で貢献したかったということ。このため、シリウスビジョンのグループ会社であるが、検査機を設置する印刷会社であれば、それがどこのメーカーのものであってもシステム提供していく。
昨今、シリウスビジョンには、大手完成品メーカーからの問い合わせも多く、印刷物以外の最終製品の外観品質検査も手掛けているという。そうした大手完成品メーカーへもUniARTSでは検査機メーカーを問わずにシステムを提供していく。そして、それは逆に「ビッグデータ」を集めていく上でも、重要な要素になるようだ。
「我々の一番の想いとしてあるのは、品質で世の中に貢献したいということ。そのためには、より大量のビッグデータを蓄積していく必要がある。このため、従来のシリウスビジョンのお客様だけでなく、他社の検査機メーカーをお使いの印刷会社にも広くこのサービスを紹介していきたい」と河村社長は話す。
さらに、特筆すべきことは、同システムは「中立性」を高めたシステムとして開発されているということだ。
「ビッグデータはどんどん蓄積されていくため、他メーカーの検査機による情報データも蓄積されれば、『この印刷物の場合は、○○○の検査機が適している』など、容赦なくレコメンドしてくる。当社はシリウスビジョンの100%子会社ではないので、当社の取り組みに賛同していただけるのであれば、ユーザーの方々はもちろん、メーカー、競合検査機メーカー問わず、出資していただきたいと考えている」(河村社長)