プロネクサス、人的ミスを完全排除〜デジタルコンテンツファクトリー E2E 導入
刷版工程の自動化運用を開始
EQUIOSを導入して工程の一元管理を実現
刷版工程の自動化に向け、まず同工場では2019年にEQUIOSを導入。これにともない、これまで各拠点に設置していた他社RIPをなくし、戸田工場だけにEQUIOSを導入することでRIPを1台に集約し、工程を一元管理する体制を構築している。
生産管理部・グループリーダーの遠山孝氏は「導入以前は、同じ会社であっても拠点間の設定を合わせることが難しく、知らないうちに設定に差ができ、結果としてプルーフと印刷物に差異が生じることもあった。EQUIOS導入の際には、品質を最重要視することから、RIPを戸田工場の1台に集約し、すべての前工程の拠点から戸田工場にアクセスすることで、共通の設定で運用できるようにしている」と、EQUIOS導入後の効果について振り返る。
EQUIOSの導入・運用により、機能の安定性や処理時間の短縮など、刷版工程における効率化に効果があった。また、一元管理による運用を開始したことで他拠点の進捗状況もリアルタイムで把握できるようになったという。
同社では、EQUIOSの中に3,400種のテンプレートを所有している。これは品質管理のほか、納期対応を見据えた運用法の1つである。
「ジョブごとに毎回テンプレート作成から始めていたら時間がかかってしまう。時間がかかればオペレータは、作業時間を縮めようと焦りながら作業をする。その結果、ミスが生じることもある。そのため、お客様のニーズと印刷・後工程の仕様に合わせたテンプレートを事前に準備しておくことで、作業の簡略化とヒューマンエラーの防止を図っている」(大山氏)
この取り組みは、刷版工程の効率化に大きな成果をもたらした。しかし、この運用では、知見のある専任者が3,400種のテンプレートの中から案件に合致するものを選定・指示し、オペレータがそのテンプレートをEQUIOSで検索、ジョブ作成をしなければならない。この選択時に間違いが起こる可能性もある。このテンプレート選定、ジョブ作成作業の自動化を実現するために導入されたのが「DCF」だ。
DCF導入でヒューマンエラーを完全に抑制
「DCF」は、印刷業におけるDTP、製版、刷版工程など、デジタル生産工程におけるシステム連携、設定、操作をプログラム不要で自動化するワークフロー自動化ソフトウエア。ブロックを組むように処理同士を繋ぎ、一連の処理、ワークフローを構築する。ワークフローの起動は手動での実行、定期実行、ホットフォルダ起動(ファイルの投入を検知)、メール受信時などのきっかけ(トリガー)で自動実行。特定の条件下で処理を繰り返したり、ファイル名など特定の条件によって処理を分岐させたり、エラー処理をしたりすることも可能。また、既存のパッケージ製品と異なり、時代の変化、業務の変更などに合わせて、柔軟に処理工程の組み替えも行える。簡単に言えば、様々なデータやシステムを「つなぐ」ことで、運用に合わせて自動化や半自動化の仕組みを構築し、作業の標準化や効率化が図れるソフトウエアである。同社では、既設のMISとEQUIOSを連携することで、自動化運用を構築した。
DCF導入以前は、案件に応じたテンプレートを知見のある専任者が選定し、刷版オペレータがその選定されたテンプレートを使用してジョブを作成するなど、両オペレータに人的負荷がかかっていた。しかし、DCF導入後は、MISの情報をもとにDCFが最適なテンプレートを自動で指定し、EQUIOSにジョブを自動作成する。これにより、これまで専任者が必要だった作業を自動化でき、オペレータのジョブ作成も不要となったことで、大幅な作業の効率化を実現。加えて、入力ミスによるヒューマンエラーを完全に抑制できるようになった。
導入以前のヒューマンエラーの発生数は年間で86件。今年4月のDCFの運用開始直後に繁忙期である5月、6月を迎えているが、現時点でヒューマンエラーの発生は、0件であるという。
「年間86件という数字は、あくまでも確認できた件数で実際には『ヒヤリハット』、つまり検査工程によって未然に防げたものを含めれば、年間300件ぐらいはあると思う。当然ながら後工程への流出を防ぐために検査工程も必要だった。しかし導入後のヒューマンエラーは、まったく発生していない。より効率的な工程の見直しを進めている」(大山氏)
実際に総労働時間では約12%の減少。さらに面付け作業時間だけで見ると、85%の減少と驚異的な成果をもたらしている。加えて、これまで2名体制で行ってきた面付け作業は、運用開始後には、通常期、繁忙期に関係なく常に1名で対応できるようになった。単純計算で作業性が50%向上したことになる。
また、同工場では繁忙期である5月、6月に約5,500件ものジョブを処理しているが、これまで補充していた応援社員を1名減らしても問題なく作業を完了している。
さらなる自動化に挑戦
生産管理部・担当部長である根本治充氏は、今回の刷版工程の自動化への取り組みについて「SCREENの提案や支援には本当に感謝している。当社のMISの情報をもとに様々な提案をしてくれ、また、急な要望に対しても柔軟に対応してくれたことが、今回のDCF運用の成功につながったと確信している」とSCREENのサポート体制について高く評価している。
また、刷版チームでは、自動化によって確保できた空き時間を今度は逆に他部門の支援に充て、工場全体の効率化にも貢献している。
DCFによる自動化の目標達成率としては、現時点で60〜70%は達成できたと言う大山氏。しかし、専任者を要する刷版作業が約30%残っていることから、「これからの1〜2年以内に自動化90%達成を目指していく」と語っている。
同社では、印刷機に隣接したかたちでCTPを設置し、CTP版の準備は印刷オペレータが必要な時に必要な分だけ出力するなど、物理的な移動時間を削減し、作業の効率化も図っている。
「これにDCFによる刷版工程の90%の自動化に加え、残り10%の検査工程を自動化することができれば、当社に『刷版』という工程自体がなくなることもあり得る。もし、その体制が将来的に構築できれば、営業がデータを投げ込むだけで印刷が完了するようなことが実現できるかもしれない」と、西山氏は先を見据えている。