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創立30周年特別インタビュー|ジーティービー・大西幹雄社長

印刷業界とともに30年 - 画像処理技術で技術革新に寄与

 画像処理技術で印刷業界の技術革新に寄与してきた(株)ジーティービー(本社/神戸市中央区)は2020年12月、創立30周年を迎えた。この間、印刷業界はDTPが普及し、CTPが登場。昨今では、ネット入稿が浸透するなど激変を遂げた。また、社会全般の情勢を振り返ると、阪神・淡路大震災やリーマンショック、現在のコロナ禍など幾多の荒波に見舞われながらも印刷業界とともに乗り越えていきたい考えだ。そこで今回、ジーティービーの創業メンバーの1人として、印刷業界の技術革新に寄与する様々なソフト開発に携わってきた大西社長にインタビューし、同社の軌跡を赤裸々に語っていただくとともに、次代に向けた展開などについてお話を伺った。


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北野異人館街の本社屋上にて大西社長


画像切り抜きソフト「シザーハンズ」が数千本を売り上げる大ヒットに

 大西社長がプログラミングの世界に足を踏み入れたのは30数年前。独立系の開発会社に入社して、そこでプログラムのイロハを学んだ。そのときの上司の1人であったのが、ジーティービーの創業者である松木宏会長だ。

 「松木会長ともう1人、ハードウェアの技術者の上司がいたのだが、その開発会社は某メーカーに吸収合併され、その会社を3人とも退職した。その1年後に元上司の2人がジーティービーを立ち上げた。そのタイミングで私も合流して創業メンバーの1人として働くことになった」

 ジーティービーの創業は1990年。社名の由来は「極楽とんぼ」。ふわふわと空中を漂いながら世間を俯瞰し、世の中に必要なものや新しいものを産み出したい思いが込められていたが「対外的な体裁として『Graphic Technology Basis』という2つ名を名付けた。まぁ、当時の英語の名刺には極楽とんぼの文字を入れていたのだが」。

 当時のMacintoshは、ようやくMac2が発売されたかどうかという時代。当初は画像処理とハードウェアの技術を強みに、いわゆる68K Macで演算する画像処理システムを提供していたという。そして1994年3月、以前からのアイデアであったという、印刷製版用画像切り抜きシステム「ScissorsHands(シザーハンズ)」を初の自社開発のソフトとして開発。これを150万円の価格で売り出したところ、数千本を売り上げる大ヒットとなった。

 「当時、印刷会社はMacを買ったものの有効に活用できない『仏壇Mac』と言われた時代で、画像の切り抜きは専用機で切るか、手で切るかで行われていた。そこでMacの標準の機構を使いながらリアルタイムに切ることができるソフトを開発したところ、爆発的な大ヒットとなった」

 そして、翌年の1995年には、1月に阪神・淡路大震災という未曾有の大災害に遭いながらも、5月に海外向けの画像切り抜きシステム「PhotoMask(フォトマスク)」を開発。これらの画像切り抜きシステムには、ラスターデータからパスデータに変換する機能が入っていたが、そのパスデータに変換する技術を使用して、昔の版下やロゴ、書家に書いてもらった商号などをベクトル化できないかという相談があった。そして同年8月には、印刷製版用高速ベクトル化システム「FontCamera(フォントカメラ)」を開発。これは元々あった「シザーハンズ」の機能を応用したものであったため非常に短時間で開発でき、スキャナとセットで販売され、数千本が売れるヒット商品になったという。

CTP時代の到来と合わせ、「1bitTIFFワークフロー」提唱

 転機の1つとなったのは、CTP時代の到来ともいわれた2000年だ。この年に開催されたdrupa2000は「CTP drupa」と称され話題となったが、この2000年に1bitTIFFワークフロー「Bit-Through(ビットスルー)シリーズ」を発売している。

 「CTPが登場したことにより、フィルムがないから刷版が出力されるまでチェックができないという問題が出てきた。そこで、1bitのワークフローで行えば、フィルムと同じ感覚で確認できるということで提唱した。当時は、PDFを印刷製版に関わるデータとして本当に大丈夫なのかと言われていた時代であった。製版処理やRIPの過程でPDFが化けてしまうトラブルが山ほどあったからである。このため、1bitTIFFに関する特集記事をJAGATで組んでもらうなど、啓蒙活動的なことも行っていた」

 「ビットスルーシリーズ」は、殖版やストリップ修正、ドットゲイン処理などを1bitになってからでも行えるワークフロー。同シリーズが生成する2値画像の品質は世界的に評価を受けており、現在もメーカーやバージョンに依存しないフォーマットとして国内外の印刷会社で活用されている。

 そして、これをリリースする中で、今度は1bitのデータと刷版を比較したいという要望が出てきたという。そこで大床製作所(当時)の刷版用スキャナと比較検査するソフトを開発した。

 その一方、グラビア印刷の会社から「クライアントの要望で、刷り出し検査をやる必要が出てきたので、印刷用紙を検査したい」という要望が出てきたという。

 「その印刷は版ズレが大きく、位置はバラバラ、さらに、水を吸うと伸びが出るなど多くの問題があった。そんな中、本当のエラーを見つけたいという要望であった。それにトライして完成したのが、のちの『Hallmarkerシリーズ』などの検査ソフトの原型となるものであった」

 この頃から、今でいうデジアナ(デジタル×アナログ)、アナアナ(アナログ×アナログ)の双方の検査を実現できる検査システムメーカーとしての、ジーティービーの歴史が始まったということができそうだ。