モリサワ、フォント事業の市場拡大へ - 海外事業、SDGs達成に重点
「MORISAWA PASSPORT」1,654書体に
「文字を通じて社会に貢献する」--フォントビジネスを中心に、海外事業やブランディング展開を加速させる(株)モリサワ(森澤彰彦社長)。昨年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けたが、森澤社長は、「新型コロナウイルスにより引き起こされたパラダイムシフトを恐れず、新たな事業機会として前向きに捉えていきたい」とし、経営計画において、「フォントビジネスの市場拡大」「海外事業の強化」「SDGs達成に向けた取り組みの推進」という3つの重点指針を掲げている。そこで今回、昨年末に開催された事業報告会から、モリサワの事業環境や実績、重点指針の展開などを紹介する。
「働き方」に応じた製品・サービス設計を
同社の2020年2月期の売上は137億900万円。フォントおよび印刷機器販売ともにほぼ横ばいで前年並みの水準となった。また、2021年2月期については、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、全社的に販売が苦戦。現段階で7.2%の売上減を見込んでいる。
新型コロナウイルス感染症拡大による事業への影響について森澤社長は、「展示会やイベントの延期・中止などの対応に追われたほか、社内でも出社人数の制限や在宅勤務を行い、感染予防に努めた。現在も東京・大阪では約7割の社員がテレワークを実施している」とし、「非接触」を強いられる事業環境において、営業面でも取引先への訪問や直接の商談がままならない状況が業績にも影響したと説明している。
一方、取引先企業においても在宅勤務が定着化する中、MORISAWA PASSPORTの使用許諾において個人PCへのインストール条件の緩和や申請書類の捺印廃止などの対応を実施し、テレワーク環境での円滑なサービスの提供につとめた。
この対応にともない、同社ではMORISAWA PASSPORTユーザーで、インストール条件の緩和などで連絡があった企業の担当者に対してアンケートを実施。その中で、今後もテレワークを「継続する」または「継続する可能性がある」と答えた企業が70%を超えている。個別の意見では、「インストール条件の緩和により業務がスムーズになった」という評価の声も多かったという。「お客様の働き方の実態や変化に合わせ、より使いやすい製品やサービスの設計を引き続き行っていく」(森澤社長)
さらにMORISAWA PASSPORTにおいては、2019年3月にグループ会社となった(有)字游工房の46書体の提供を昨年11月から開始。同社アンケートやSNSでは、「もともと字游工房ファンなのでとても嬉しい」「子会社化のニュースを知ってから提供を楽しみにしていた」といった歓迎の声が多数寄せられたという。森澤社長は、「字游工房フォントは、モリサワが従来リーチできていなかったユーザー層に多くのファンがいることが分かった。また、デバイスへの組み込みの案件もある。豊富なフォントラインアップによるモリサワの強みが増している」としている。
一方、昨年は同社がオフィシャルサポーターに名を連ねる「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」が延期された。これについて森澤社長は「引き続き大会公式フォントを通じて情報が正しく迅速に伝わるよう支援するとともに、オフィシャルサポーターとして大会の成功とスポーツの発展に貢献していく」と語っている。