ショールームを訪ねて|富士ゼロックス、顧客とともに変革に挑戦する「Future Edge」
印刷の未来を具現化 〜 最新設備で新ビジネスの検証が可能
「見学」から「活用」する施設へ
開設から約1年半が経過し、これまで社内外を合わせて約5,000人が来所し、その半数にあたる2,500人超がユーザーだ。開設当初は、Future Edgeをより多くの方に認知してもらうため、団体で来所するユーザー向けに見学会のようなイベントも積極的に実施してきた。
同社・グラフィックコミュニケーションサービス事業本部 Future Edgeの磨田侑奈氏は、「来所頂いたお客様から寄せられる実際の声を聞きながら、Future Edgeの方向性を絶えず微調整するなど、利便性の向上に取り組んでいる」と、開設から1年半が経過した同施設の運営方針について説明する。
その取り組みは社内外に浸透し、2度目、3度目とリピートする来所者の目的は、施設見学ではなく技術検証やワークショップなど、実際のビジネスを見据えた利用がほとんどだという。
同社・グラフィックコミュニケーションサービス事業本部 Future Edge センター長の新甫雄二郎氏は「Future Edgeの挑戦は、お客様との対話の中から課題の本質へと深堀していくこと。そのためにワークショップでお客様が求めていることや抱えている課題を共有し、解決策を検討していく。そして解決策がまとまれば、実機でテスト検証を行っていく」と、同施設の活用フローを説明する。
大型設備を使用して様々な技術検証が可能
また、広大な敷地面積を有する海老名事業所という立地条件を活かし、都心部の施設では設置できないような大型設備を使用した検証が行えることも同施設の大きな特徴となっている。
現在、「Smart Factory」エリアには、同社製の高速ロール紙カラーインクジェットプリンター「11000 Inkjet Press」にフンケラー社とホリゾン社の後加工機器をインラインで接続した印刷・製本生産ラインが設置されており、実機を通じてスマートファクトリーの体験・検証ができる環境を整備している。さらに設置されているプリンターや後加工機は、同社の工程管理システム「Production Cockpit」につながっており、リアルタイムで各設備の稼働状況を確認することができる。

同社・グラフィックコミュニケーションサービス事業本部 Future Edge マネジャーの高橋昌史氏は「高速ロール紙インクジェットプリンターにインラインで後加工システムを接続した生産ラインを使用したテスト検証が行える場所は、国内では数えるほどだと認識している。そのため、お客様だけでなく、パートナー企業である後加工機メーカーとも、様々な技術検証を行っている」と、同施設の設備面における優位性を強調するとともに、パートナー企業との共同検証では新たな技術開発につながった実績があることを明らかにした。
つまり、顧客だけでなく、パートナー企業への検証の場の提供もこのFuture Edgeの機能の1つであり、その技術開発は印刷産業に新たな価値をもたらすものとなっていく。
技術開発拠点で顧客とともに新たな変革を起こす
従来型の明るく、スタイリッシュな空間に最新設備を設置したショウルームでは、機械やデモンストレーションなど、見せ方すべてが「綺麗」でなければならない。しかし、新甫氏は「それはあくまでも『出力確認』でしかない。Future Edgeでは、実業務を想定した検証や、新たなビジネスの創出に向けた実機によるテストなどを行うことを目的としている」と、その活用目的が従来型の「見せるショウルーム」とはまったく異なることを指摘する。
実際に顧客から「この紙を使用して印刷したい」「この加工をクライアントに提案したい」といった要望を受け、同施設で頻繁にテスト検証が行われている。新しいことに挑戦するため、当然、稼働中にトラブルが発生することもある。しかし、そのトラブルは、課題検証の材料となり、次へのステップに向けて活用されていく。さらに同社の技術開発拠点である海老名事業所内にあることで、営業やシステムエンジニアだけでなく、開発や生産の担当者も直接、顧客と課題を共有し、議論することができる。新たなビジネスモデルの創出に向け、より迅速な対応が可能となっている。この点も一般的なショウルームにはない、同施設の大きな特徴の1つだ。
「上流から下流まで、すべての生産工程を体感・体現・実証できることがFuture Edgeの強みである。今後もお客様、そしてパートナー企業と連携・協力し、新たな開発に挑戦していきたい」(高瀬氏)
現在、多くの印刷会社では、従業員不足という問題を抱えている。さらに「働き方改革」の実施により、労働時間も制限されてしまう。この問題を解決する手段こそ自動化なのだが、自動化を構築するためには、投資コストや様々な設備を配置できるスペースなども必要となる。
また、場合によっては人的な作業の方が生産効率が上がるといったこともある。この人件費と設備投資の分岐点を検証していくことも同社の使命であると考えており、今後もFuture Edgeを通じて、個々の顧客にとって最適な自動化の検証・提案を行っていく方針だ。
