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トップインタビュー|日本アグフア・ゲバルト 岡本勝弘社長に聞く

プリプレスのFA構想、次のステージへ
工場から経営改革実践へ 〜「工場長サミット」で人材育成

 資材価格の高騰や人手不足といった外部要因を背に、これら悪材料を解決に導く「プリプレスのファクトリーオートメーション(FA)」や「アズーラ速乾印刷」が市場から受け入れられ、新たな需要獲得およびブランディングに成功した日本アグフア・ゲバルト(株)(岡本勝弘社長)。今年もFAソリューションのレベルアップや速乾印刷を通じて工場から経営改革が実践できる人材の育成にアプローチする「工場長サミット」の開催など、独自の発想で新たな試みに挑戦していく。今回、社長就任から2年目を迎えた岡本社長に、その背景と具体的な取り組みについて聞いた。


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岡本 勝弘 社長


多くの経営者が動いた1年

 私自身、社長就任以前はマーケティングやサイン向けの大判インクジェット関連事業に従事していたこともあって、製版関連製品をご使用いただいているお客様と接する機会はそれほど多くはなかった。しかし、昨年1月1日の社長就任を機に、「今年はお客様との接点を増やす」という意識のもと、日本全国様々なところに出向き、多くの経営者の方々とお会いした。インクジェット畑だった私が、製版関連分野との距離感、ギャップを埋めることに時間を費やした1年だったように思う。

 その数々の出会いの中で、印刷会社の経営者の方々から多くを吸収し、そこで得たものを当社の開発部門へフィードバック、そしてお客様へ本当に価値のある製品、ソリューションを提供、このような一連の仕事の中でお客様のニーズを的確に捉えることができた1年だったと考えている。そして、多くの経営者とのお付き合いの中で、私にも経営者目線が芽生えたことは新米社長である私には大きな収穫であった。これまで自分が得意としていた「技術力」だけでなく、そこに「印刷経営の視点」が加わり、おこがましいようだが、経営的な視点で様々な提案ができるようになったと自負している。 一方、昨年の印刷業界は年明け早々から印刷資材の値上げや紙不足に見舞われ、印刷業界を震撼させる年であり、私の「社長業」も波乱の幕開けとなったわけだが、昨年はこれまでの「やり方」いわゆる経営、業務など今まで常識としていたことが通用しなくなったことを痛感する年であったと感じる。ただ、こういう厳しい時だからこそ、多くの印刷会社の経営者が変革に向けて動いたのも事実。これまで変化を拒んでいた経営者が、「このままでは通用しない」と気付き、本気で経営改革に挑もうとする過程で、これまで目を向けることのなかった当社のソリューションを評価するといったケースが多々見られた。その最たるものが製版業務の無人化運用を実現する「プリプレスのファクトリーオートメーション」と印刷現場のコスト削減、品質向上を実現する「アズーラ速乾印刷」である。変革を求められる時代だからこそ、改めて我々のビジネスチャンスが生まれたと感じている。

FA構想全体をデザインする

 「プリプレスのFA化」は、IGAS2018で我々が発表した製版業務における自動化ソリューションである。このコンセプトは、数値的にも改善効果が分かりやすく、すぐに実現可能なことから、資材の高騰や人手不足といった課題を背景に多くの印刷会社で受け入れられた。

 アグフアの「ファクトリーオートメーションシステム」は、クラウドワークフロー「アポジー・クラウド」、クラウド型ファイルストレージサービス「アポジー・ドライブ」、さらにアポジー・ドライブの拡張機能である自動化ツール「アポジー・ドライブ オートパイロット」といったソフトウェアに加え、一度に1,200版搭載できる自動化CTPパレットローディングシステム「エキスパート・ローダー」、さらにプレートの版曲げから印刷機ごとの自動振り分けを可能にする「プレート・トランスポーテーション・システム(PTS)」といったハードウェアで構成される。これら一連のシステムすべてを必要とするユーザーは限られるが、必要に応じた部分的な選択でもその効果は出ている。なかでも大きな反響を呼んだのが「エキスパート・ローダー」で、国内ですでに10台以上が稼働している。エキスパート・ローダーは、版をCTPに搭載する手間が省けるだけでなく、重労働業務の是正、廃棄物の削減など仕事の効率化以外の部分でも効果が大きい。

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アグフアの「ファクトリーオートメーションシステム」


 「PTS」の受注もいただいている。この商品を通じて我々が学んだのは、FA化にはシステムという「モノ」も大事だが、オートメーション全体をデザインすることが最も重要であること。工場内の導線を含めたすべてを理解した上で、経営者とともに効果の最大化を実現できるデザインを構想し、ゴールを共有する。ここが最も重要である。

 急速に変化していく社会に適応していくためには絶えず新しい知識を身に付けて変革というチャレンジをし続けることが勝ち残っていく秘訣だと思っている。印刷業界における技術、知識、業務のやり方もすぐに陳腐化してしまう時代の中で、常に新しい技術、知識を取り入れながら時代の先端を走り続ける強い組織づくりが急務となっている。我々が提案するプリプレスのFA化はその効果も大きく、すぐにでも取り組むべきことだと感じているし、取り組みの中でIoT、ロボット技術など最新の技術を駆使して設計されたオートメーション技術に触れることで、そこで働く方の技術、知識増強につながり、時代の先端を走れる強い組織づくりのための社員教育にもなる。アグフアも常に時代の先端を走り続けるために社員教育には力を入れている。かつてフイルム時代の技術もいまや陳腐化し、その新しい技術としての価値がなくなった。当時、それら技術のスペシャリストと呼ばれた当社のスタッフも、現在はクラウドやIoTといった分野に目を向けて技術習得し、その知識を製品に活かしたプラットフォームを提供している。また、CTPをはじめとしたハードウェアのエンジニアもオートメーション構想を学習し、お客様先で最高のパフォーマンスを発揮できる自動化システムの提案ができる体制を整え、お客様からも評価を得ている。