経営者が考える工場経営のあり方とは:佐川印刷株式会社・佐川正純社長
経営改革は工場から 〜 速乾印刷「守破離」の道へ
「速乾印刷に定義はあるのか」
そこでひとつの疑問が。「速乾印刷に定義はあるのか」、それはノーである。しかし、工場によって速乾印刷に「レベル」はある。ならば、「明確な目標」を定め、それを実現し、継続的な改善を図っていくにはどうすればいいのか。「何とか『パウダーゼロ』という明確な目標を持ちたい!」と考えている矢先、アグフアの超優良顧客であるベルギーの印刷会社を訪れる機会があった。
その会社では、最新の印刷機で最新の自動印刷を実践していたが、工場はパウダーまみれ。それを1日かけて清掃している光景を目の当たりにした時、「我々の試みは正しい」と確信した。
そこで、工場の全体最適や生産性向上を、お金を掛けずに如何に実現するかを考えるわけだが、オフセット印刷は厄介なもので変動要因が多い。この変動要因をコントロールするために現場はどうしても保守的になりがちである。もちろん、改善活動は行っているだろうが、現場は旧来の仕事のやり方やルールを守ることが仕事になってくる。固定観念や常識が固まってしまうわけだ。
日々習慣的に行っていることを見直す機会は非常に少なく、なかなか難しいもの。しかし、オフセット印刷の長い歴史の中で、それを「守るだけ」では上手くいくはずがない。
そこで改善を試みると「ローラーメンテナンス×湿し水×パウダー×インキ×ブランケット...」となる。つまり、「守」の時は足し算だったものが「破」になると掛け算になり、検証パターンが幾通りにも膨れあがってしまう。これを1社で検証するには莫大な時間と労力を要する。昔学んだ知識、一個人の経験から得られた知見だけでは、物事に適切に対処できているとは思えない。
当社では、社員が道に迷わないために、「埃をなくして誇れる職場を実現しよう!綺麗なところも、出来ていることも、さらに磨いて職場を輝かそう!〜世界一誇れる工場に挑戦!」という目標を掲げている。また、今年引退した元プロ野球選手のイチローも次のように語っている。「今、自分にできること。頑張ればできそうなこと。そういうことを積み重ねないと、遠くの目標は近づいてこない。遠くの目標だけを見ていては、達成への不安が生じ、しり込みしてしまうでしょう。だからこそ、今できることを積み重ねていくのです。そして、目標は必ず達成できると思えば、楽な気持ちで、集中して臨めるはずです」
我々もひとつひとつ目の前にあることを、階段を1歩1歩登るように改善を加えていくことが大事である。
トップ集団で技術を極める
「今年こそ『工場長サミット』をやろう!」と決意したきっかけは、アグフア・岡本勝弘新社長の就任だった。「護送船団方式」ではなく、トップ集団による技術を極める活動である。「掛け算」を1社ですべて実践することは難しい。一緒に挑戦してくれる仲間を見つけて「守」を実現し、「破」「離」を目指すような活動にしたいと考えている。
その第1回「工場長サミット」を今年6月、(株)藤和 戸田工場で開催した。当社は、その直前の5月、これまでのオフセット印刷の常識を覆す「1万4,000回転でのパウダーゼロ印刷」に成功し、その成果を持って工場長サミットに挑んだ。これはあくまで瞬間風速的なもので、技術を確立したわけではないが。
さて、工場長の仕事って何だろう。私は、生産性の向上や問題の責任は、経営者、そして工場長にあると考える。これからの経営者=工場長は生産性の問題にコミットして企業や工場のあり方、組織を変えていく必要がある。「ものづくり」は「人づくり」なのである。
今までのやり方を変え、変革を実践し、新しい製品やサービス、技術を開発するといったことを能動的に行わなければならない。答えを簡単に得ようとしないことが重要である。「急いで行きたいなら、一人でいけ、遠くへ行きたいなら、一緒にいけ」というアフリカの言葉があるが、工場長サミットは、仲間とともに難しい課題に対して情報交換、切磋琢磨する場である。「息は吐かないと、吸えない」、そんなプロジェクトである。
第1回工場長サミットでは、速乾印刷の基準となる印刷チャートを、藤和が独自で作成したチャートをベースに作成した。これは両面印刷機用で、この基準だと当社でも現在は1万2,000回転までしかパウダーレス印刷はできない。四隅に重い絵柄が配置されており、しかも刷った後すぐに50kgの重りを載せる。つまり棒積みができなければならない。ぜひ、この基準で速乾印刷に挑戦していただき、自社が「守」をクリアしているか確認していただければと思う。
おもしろいことをやっていく仲間を集い、トップ集団として技術にチャレンジする。これが「工場長サミット」の目的である。今回、第1回を関東で開催したが、今後は関西でも企画したいと考えている。