ウィザップ、最新機に劣らない性能を老朽印刷機で実現〜アイマー・プランニング IPCシステム導入
「インキコントロール機構が神業」:若手オペレーターもスキルレスで操作
翌年の夏にはメイン機にIPCシステム設置〜稼働20年の老朽印刷機が生まれ変わる
それまではハイデルベルグの4色機をメイン機として使用してきた同社。しかし稼働20年近くになり、さすがに経年劣化も各所に出はじめ、生産・品質ともに下降傾向が見られるようになったという。「ベテラン機長ですら運用が難しく、トラブルも多発していた」(苗木本部長)。

そこでハイデル印刷機についてもIPCシステムにより「延命」することを決定。生産性・品質の維持と若手への運用体制変更の施策として、リョービ印刷機での実績効果を評価し、スキルレス印刷を可能とする経営計画を立て、2018年7月にIPCシステムをハイデル機に設置した。
そして、同社はこれをきっかけに、これまで印刷の補助作業などを行っていた若手オペレーターを機長に起用するという大胆な試みに出た。高橋社長は「現在、機長と言われている人達は高齢化が進んでいる。2020年問題と言われているが、当社にも40代、50代の社員が4割ほどいる。ベテラン機長が高齢化する中、若手にチェンジしなければならない」と将来を見据えた決断であったようだ。

まさしく、「チャレンジ」といえる経営判断であったが、IPCシステムを運用して1年の若手機長・オペレーターは、数値管理によるスキルレス作業により、ベテラン機長ですら苦労した20年選手のハイデル印刷機で安定した濃度管理の印刷を実現している。苗木本部長は「まさに異世界印刷。最新機に劣らない性能を老朽機で実現した。これはIPCシステムのコントロール機構が『神業』だからこそなせるもの。若手機長・オペレーターは現在も育成中であるが、これからは実際にさらなる効果が見えてくるはずだ」と、その特許技術を最大限に評価している。
「分割ダクターローラーは革新的な技術。今までにないコントロールのシステムである。複雑な動きと、ローラーの個々の細かい交換のメンテナンス部分が難しいようなので、そこの部分の技術精度をさらに上げていただいて、耐久性も上げてもらえれば嬉しい。ユーザー側の意見で言えば、究極は新台の印刷機につけていただければ理想的。なかなか難しいかも知れないが、メーカー相互の技術協力や共存共栄は、印刷業界の発展のためには必要なこと」(高橋社長)

現在、IPCシステムを搭載したリョービとハイデルベルグの両印刷機は、どちらもメイン機として活用できるとのことで甲乙つけ難いようだが、「どちらもジャパンカラー基準で問題なく対応できる」(苗木本部長)とのことだ。
「最新印刷機では解決しない」〜優れたコストパフォーマンスを評価
高橋社長はIPCシステムについて、「1つの周辺機として考えると決して安くはないが、新台を導入することなく、老朽化した印刷機を新台に劣らない性能に生まれ変わらせることができることを考えると、そのコストパフォーマンスの良さは計り知れない」と導入時のイニシャルコストの良さを評価しているが、新台の導入ではなく、老朽化した印刷機を延命して使用するメリットについて「印刷機を回して稼働率を上げれば儲かる時代は終わり、新台を入れて利益を出すためには、あらゆる面でのコスト削減が必要になる。人やメンテナンスに関わる経費を削減していくことは安全、安心を損ない、事故の確率を上げることにつながる」との見方を示しており、ランニングコストまで含めて見てもIPCシステムにメリットがあると判断した上での導入であったようだ。
アイマー・プランニングは「IPCシステムを搭載すれば、分割呼び出しローラーのメンテナンスさえしっかりとやれば、陳腐化しない限り、さらに10年、20年は使えるはず」としており、この耐久性の数字は実際に製缶業界で実績があるとのこと。設備投資に巨額をかけることが難しい昨今、IPCシステムは印刷会社の経営に大きな影響を与えるシステムと言えるだろう。
高橋社長は2005年に社長に就任して今年で14年目。今後の後継者への事業継承に向けて「やり残したことはない」(高橋社長)ということだが、まだまだ新たなことに挑戦していきたいとチャレンジ精神は旺盛だ。その1つに、世の中には働き方改革で休みが増えると売上が下がると心配する経営者がいる中で繁忙期を除き週休3日制にチャレンジし、その為に必要な生産性向上を経営計画の重点課題に上げ、2018年度は週休3日制を9日間実現している。2011年の東日本大震災で8億2,000万円にまで落ち込んだ売上は、以降、右肩上がりを続け、2019年8月決算では10億6,000万円を超えた。「一緒にワクワクしよう!」を経営理念に掲げる同社の新たな取り組みは、業界内外から大きな注目を集めそうだ。
