コダック、自前技術で「印刷の近未来」提示 - SONORA1.5倍に挑む
──コダックとして近未来の印刷現場をどのように捉えているのか。
藤原 「近未来」という意味では、人の手を介さない「オートメーション化」に向かうことは間違いない。しかし、その中間的な段階では、働き方改革にともなう女性や外国人といったマンパワーによる「生産効率の向上」へと向かうだろう。
工場の近代化、未来形を考えた時、そこで鍵を握るのは間違いなくIT技術だ。開発が進み、完成度が高いハードウェアの情報をIT技術が如何に結びつけていくか。今後の印刷工場の設計においてもここが肝となる。この部分に対してコダックは、PRINERGYの機能をはじめ、協力会社との連携による共同ソリューション、あるいは海外事例を日本に持ち込むことでサポートできる体制が整っている。
──ここ数年、コダックが注力する完全無処理プレート「SONORA」の販促状況は。
藤原 SONORAは、従来のプレートと同様のハンドリングで大きなメリットもたらすソリューションとして市場に受け入れられ、昨年はスケールの大きなユーザーにも採用されはじめた。導入後にこれほど多くの前向きなフィードバックを頂ける製品はなかなかない。
その理由を突き詰めると、実際お客様がオペレーションする中で、人件費削減に大きく貢献することが分かり始めてきた。規模が大きくなればなるほど、そのコスト削減効果は大きく、現像にかかわるトラブルによる調整や再出力など、細かなロスまで含めると、消耗品よりも人件費のコストセービング効果の方が大きいということが、ひとつの顧客満足に繋がっている。
今後の開発の方向性としては、基本的に「全スペックで競合に負けない」ということ。視認性については現在でもかなり優位な立場にあると自負しており、耐刷性についても追従があるものの、我々はその先も見据えて開発を進めている。SONORAは、省電力UVに対応する世界初の完全無処理版として日本でいち早くリリースされた製品。「耐刷性」や「視認性」に関しては市場のニーズに応えるべく継続して開発・改良を進めており、年内にはさらに性能を強化した製品を上市する予定。期待していただきたい。海外市場を含め、無処理版におけるコダックのリーダーシップには揺るぎないものがあると自負している。
昨年の1月、SONORAの販売について、前年比1.5倍という目標を掲げて挑んだ。結果、2倍を超える実績をあげることができた。当初は、事業規模が拡大したSONORAの販促において、1.5倍という数字は我々にとってチャレンジだったと思う。我々がなぜSONORAを強力に推進するのか。それは、お客様の利益向上はもちろんだが、労働環境や地球環境保全といった社会的なミッションも感じながら拡販しているからだ。2倍という実績は、その意図が市場に伝わった証だと思っている。
私は昨年、「オリンピックイヤーとなる2020年までに当社が出荷する全プレートの3割がSONORAに置き換わる」と予測したが、この勢いだと半分近い出荷がSONORAになるかもしれない。
──昨年11月、イーストマン・コダック社がフレキソ部門の売却を発表したが、今後のオペレーションはどうなるのか。
藤原 フレキソグラフィックパッケージング事業部(以下「FPD」)を大手プライベート・エクイティ会社のMontagu Private Equity LLPへ売却する。すでに正式契約を締結しており、クロージング後FPDは、パッケージング印刷セグメントに対してKODAK FLEXCEL NXシステムをはじめとするフレキソグラフィック製品の開発、製造、および販売を行う新しい独立企業として運営される。
FPDは新たな所有者のもと、近年コダックにおいてこの事業を支えてきた同じ組織体系、経営チーム、成長文化を維持。過去3年間、FPDのプレジデントを務めてきたChris Payne氏がCEOとして新会社の舵取りを行う。
つまり、オーナーシップは英国の会社に変わるが、社長を含めた基本的なオペレーションは、各国そのまま維持されるということ。また、コダックのポートフォリオからは切り離されるが、コダックブランドは継続される。お客様にとっては、会社は変わるものの製品、サービスは何ら変わらないという移管の仕方になっている。
──最後に、2019年の抱負を。
藤原 印刷物は「五感に訴えるメディア」であることをもっと訴求すべきだ。コダックがそこに貢献できるような立ち位置でビジネスができればと考えている。紙メディアからWebメディアへの需要の流出は止まっていない。それは、Webメディアが身近で手軽にアクセスしやすい媒体であるからだ。印刷物ももっと身近で手軽に利用でき、アクセスできるメディアであることを業界としてアピールし、「人間の五感を使って情報をやり取りする」という「価値」「気付き」を訴求する一助となる仕事ができればと強く思う。
また、数値目標を挙げるならば、さらにSONORAの拡販を図り前年比1.5倍に再度挑戦したいと考えている。ボリュームが増えたいまでは、かなり挑戦的な数字目標である。
一方、オフセットもインクジェットも、パッケージ印刷分野に向けたビジネスを強化していきたい。唯一成長が見込まれるセグメントであるとともに、我々の主力とも言えるSONORA、インクジェットの実力がパッケージ分野でも生かせる体制が整いつつある。市場的にはそこに注力したい。
また、総合力という意味では、自前の技術でプリプレスのトータルソリューションを提案できる「コダックのユニークさ」を訴求し、それを上手くお客様に活用いただきたい。我々が提案するシステム、ワークフローをフル活用いただくことで、印刷工場の近代化に貢献できればと考えている。