コダック、自前技術で「印刷の近未来」提示 - SONORA1.5倍に挑む
完全無処理サーマルCTPプレート「SONORA」の拡販で昨年も大きな成果を挙げたコダックジャパン(藤原浩社長)。引き続き今年も、プロセスフリープレートの課題のひとつとして指摘されてきた「耐刷性」の向上を図る次世代バージョンの上市で、さらなるシェア獲得を狙う。さらに、SONORA、PROSPERインクジェット事業におけるパッケージ分野への水平展開も強化していく考えだ。今回、2019年の幕開けに際し、藤原社長にインタビューし、その具体的なソリューション展開について聞いた。
──まず、現在の印刷業界を取り巻く環境について、どのように捉えているのか。
藤原 大きなトレンドが急速に変わっている感じはなく、印刷業界全体では、依然として市場規模の減少が続いていると感じている。そこに諸物価の高騰や人件費の負担(人材不足)といったコスト圧力が強まり、売上・コストの両面でコントロールが難しい状況にある。環境としては、必ずしも改善傾向にあるとは言いがたい。
しかし一方で、印刷会社の決算発表などを個別に見てみると、大手をはじめ、堅調な業績をあげている会社もあり、決して「総じて悪い」という訳ではない。そういう意味では、印刷以外、あるいは周辺分野で付加価値を見出し、事業を拡大することで印刷需要を補っている。我々のお客様も千差万別であり、会社経営の舵の切り方によって差が出ているように感じる。
私は、毎年100人以上の経営者に会う機会があるが、成長企業の特長は、5Sはもちろん、すべての面で基本に徹底していることだと思う。さらにビジネスモデルが明確であること。営業を排除した印刷通販などはそのひとつの例だろう。
他にも「印刷はマーケティングのシナリオができたときのひとつのツール」だと割り切り、コンテンツ制作に軸足を置く。あるいは、地域のメディアセンターとしての機能に徹する。そんなビジネスモデルで利益を上げている会社も結構ある。
あとは、人材も含めた先行投資を実践する会社。最新鋭の設備、IT投資、働き方改革など、様々なアプローチが想定されるが、やはり他よりも早く、ある程度のリスクを取っている会社は、それなりにリターンも多い。
──では、印刷の分野別動向は。
藤原 前述の話は、基本的にはオフセット印刷、商業印刷分野の状況だと思う。この分野では印刷物の需要の減少は止まらない。それを「付加価値」で如何に食い止め、価格に反映していくか、そのせめぎ合いが今後も続くだろう。
一方で、フレキソ印刷分野は、印刷機の投資をはじめ、堅調に推移している。「環境」「安全」というキーワードで注目度は徐々に高まっている。パッケージ分野そのものが比較的堅調な分野。フレキソ印刷の成長余力はまだまだある。
インクジェットにおいても、フレキソ同様、パッケージ分野で堅調な投資が続いている。イタリアのフレキシブルパッケージング業務用機器メーカーであるUteco社とともに昨年発表したラベル・軟包装向けデジタルプレス「Sapphire EVO」の日本1号機受注もそのひとつの動きだ。
また、インクジェットはバリアブル印字の活用によって、さらにマーケティング的な要素で広がりを見せる余地がある。現在もタバコのパッケージへのバリアブルQRコードの印字で我々のインクジェットソリューション「PROSPER」が活躍しているが、既にお菓子のパッケージなどへの応用も始まっている。
一方、drupa2016で発表したULTRASTREAMの開発が最終段階に入っており、いよいよラインヘッドの供給が開始される。
これは、小さいサイズのドロップを均一に落とし、印刷されない部分に電荷をチャージして、それを抜き取るという技術。印刷部分は電荷に影響されずに落ちてイメージを形成する。この技術により、インクサイズはStreamのおよそ1/3になり、各種の用紙やフィルムに最高150m/分の速度で600×1,800dpiの高精細印刷が可能となる。
現在約20社のOEMベンダーと覚書を締結。既に法的拘束力のある開発契約に同意したベンダーもあり、いよいよ製品開発がスタートする。
──昨年のIGAS展の感想や成果は。
藤原 展示会自体はまだまだ規模の縮小傾向が見られるが、昨年のIGAS展は少し違った熱気があったように感じた。「システム化」「ロボット化」「オートメーション化」といったキーワードが目立ち、厳しい経営環境の中にあって、「コスト低減」「付加価値向上」へ向けた印刷業界の熱意も感じられた。
その中でも、様々なメーカーが連携しながらのソリューション展示を行っていたが、コダックは少しユニークな立場にあったかと思う。コダックの場合、自前の技術で機械、ワークフロー、消耗品を持つ強みを生かし、我々のブースだけでプリプレスのひとつの完結形、あるいは進むべき方向性を示せたのではないかと思う。スマートフォンやタブレット端末からCTPの出力と管理が可能になる「Mobile CTP Control App」や視認性を高めた次世代の完全無処理版などの展示で来場者から注目を集めたと自負している。