【対談】アズーラ速乾印刷で実現する印刷会社のダイバーシティ
佐川印刷・佐川正純社長 × アグフア・岡本勝弘マーケティング本部長
佐川印刷(株)(愛媛県松山市、佐川正純社長)は2017年3月に名誉ある経済産業省「新・ダイバーシティ経営企業100選」および中小企業庁の「はばたく中小企業・小規模事業者300社」を受賞した。今回のダブル受賞を受けて、佐川社長と日本アグフア・ゲバルト(株)(東京都品川区、松石浩行社長)の執行役員である岡本勝弘マーケティング本部長に、今回の受賞の背景と佐川印刷のダイバーシティに関する取り組みについて語り合ってもらった。
印刷産業習慣病にIT技術で
岡本 この度は名誉ある賞の受賞、誠におめでとうございます。印刷業界では非常に数少ない受賞社であり、佐川印刷様の取り組みが認められたのは業界では大きなニュースだと思います。ダイバーシティは社会的にも話題になっており、現在では、どの企業もダイバーシティに取り組む必要性が出てきたと感じています。ダイバーシティ2.0という言葉も出てきており、社員個々の能力を最大限に引き出し、付加価値の創出を目指す取り組みも目立ってきました。印刷業界も例外ではなく、働き方の多様性を求められていると思います。
佐川 そうですね。我々は愛媛県に本社を構え、地域に密着した印刷物作りを続けていました。「印刷を通して地域に貢献する」をモットーにしております。しかし、インターネットの出現により環境は大きく変化し、社会における印刷の役割も変わっていきました。印刷業だけでなく、Web関連業など、マルチサービスの提供に転換し、社会の潮流を捉えた事業を行っておりました。
そんな中、少子高齢化問題がますます深刻になってきています。これまでお客様目線で事業転換を行ってきましたが、今度は「社員の働き方」を考えることが必要になったのだと感じるようになりました。とくに我々は地方企業ですので、人材確保は大きな課題でした。社員全員が働きやすく、活躍できる職場を作ることは必須だったため、ダイバーシティに関する取り組みは、比較的早くから行ってきたと自負しております。
岡本 印刷業界は他の産業と比較して男性中心であり、「働き方改革」の難しい産業のひとつであると思いますが、近年では組合でもダイバーシティに関するセミナーなど様々な取り組みが行われています。
そんな中で、今回の佐川印刷様の「新・ダイバーシティ経営企業100選」(経済産業省)、「はばたく中小企業・小規模事業者300社」(中小企業庁)のダブル受賞は業界に大きな影響を与えると思います。とくに「新・ダイバーシティ経営企業100選」に関しては印刷業では今回唯一の受賞社となっております。受賞の経緯を教えていただけますでしょうか。
佐川 これまで当社では当たり前として取り組んできたことが評価され、この度、賞を頂いたことは大変うれしく思います。やはり地方の過疎化や少子高齢化は当社にとって大きな問題でした。そのため、女性の登用や定年退職した社員の雇用も積極的に行っていました。もちろんそれは簡単なことではありませんでしたが社員全員が一丸となって、試行錯誤し、社内の改革を実現し、いまに至っていると思います。
私は、人間に生活習慣病があるように、印刷会社にも印刷産業習慣病があると思います。印刷産業習慣病とは、これまでの作業を従来のやり方で行うことで積み重なる非効率的な悪習慣のことです。この悪習慣を正すためにIT技術を利用した作業効率改善と働く現場環境の改善に力を入れました。そして、多様な人材が働きやすいよう、多様な働き方を提案できるようにしました。
作業効率の改善に関しては受注から配送までの各工程の徹底的な自動化に力を入れ、働き方改革に取り組みました。当社は以前よりMISを中心とした当社独自のJDFワークフローを構築しておりますが、集めたビックデータをいかに分析し、働き方改革に結びつけるかが重要だということに気がつきました。印刷会社のあらゆる工程を数値に表し、受注・生産業務を見える化することで、各工程の非効率な作業を発見することができ、改善を行うことができます。この見える化により、営業部門、製造部門によるジョブの適切な取捨選択が可能になり、作業と時間のムダを省くことができるようになりました。
その一方で、社員同士のコミュニケーションを活性化させ、改善・改革に取り組み、付加価値の高い仕事へと社員がシフトするようにしました。人間は人間にしかできないことをやり、それ以外の作業はコンピューターや機械が行う。たとえば、断裁機は最新の機械を導入して、可能な限りオートメーション化しました。その一方で、機械のメンテナンスや修理は正社員が行うようにしたのです。
働く現場環境の改善に関しては、安全第一で誰もが働きやすく、安心して活躍できる職場環境を整えることに力を入れました。当社では現場環境の改善活動として早くから現像レスプレートを採用しました。製版工程の現像プロセスは強アルカリを使用し、現場環境が良いとはとても言えません。印刷業界が男性中心の社会と言われるのは、このような強い薬品を使っているからかもしれません。ダイバーシティ対応、とくに女性登用という観点ではこのような強い薬品はなるべく使用したくないものです。当初採用した現像レスプレートは、製版の現像プロセスの改善はできたものの、私の考える印刷現場の改善まではできず課題を残しました。そこで出会ったのがアグフアの現像レスプレート「アズーラ」です。アズーラは印刷現場の課題を解決し、今回の受賞に大きく貢献してくれました。