「工程改善」という視点 〜 富士フイルムのトータルカラーマネージメントソリューション
FFGS技術二部 大橋彰氏・安倍慎哉氏に聞く
クラウドベースのCMS
大橋 クラウドベースカラーマネージメントシステム「XMF ColorPath」は、オフセット・CTP・POD・インクジェットプルーフなど異なるデバイスの統一した色管理を実現するもの。本社・工場・営業所など複数拠点を持つ印刷会社の統一した色管理なども実現する。
まず、プロファイルとCTPカーブ作成によるカラーマネージメントにより、各工程で色が合った状態にする。そこから経時変動によって変わる印刷状態を、数値で定常的に管理し、基準範囲内であるかチェックする。もし基準から外れていれば、その原因となる印刷機、プリンタの状態を確認。キャリブレーション、デバイスのメンテナンスによって元の状態に戻し、その色基準を維持する。これは「カラーマッチングした状態を安定的に維持管理する」という考え方。
具体的な事例を紹介すると、フジカ様(愛知)では、LED-UV、水なし、油性の異なる3種の印刷方式において色再現に差が生じ、また同一印刷方式でも表裏で色再現に差があった。さらに同社では、「自社で色管理ができる体制を構築したい」と考えていた。
そこでXMF ColorPathを導入。3種類の印刷方式でチャートを印刷してXMF ColorPathに読み込ませると、CTPのドットゲインカーブを自動で作成。3種の印刷方式間の色整合を実現し、刷り出し時間を2割短縮している。また、新たな資材を導入する際のカーブ設定も自社で対応可能になった。
一方、丸正印刷様(沖縄)では、PODをプルーフ用途で使用するも、2台のPOD間の色差、安定性の差が大きくなり、そのなかで「印刷とPODプルーフのCMS精度を向上させたい」「POD複数台運用時の機器変動をなくしたい」という要望が生まれた。これに対し我々は、i-ColorQC印刷診断の実施とXMF ColorPathを提案。効果としては、印刷とのマッチング精度が向上し、刷り出し時間を半減、工場全体で延べ7時間/日に相当する大幅な削減のほか、グループ拠点間の色校送付の廃止、色管理に対する現場意識の向上、クライアントの信頼性向上(印刷立会いの回数減)などが挙げられる。
安倍 XMF ColorPathの最大の効果は、数値で明確な合否判定が出るため、現場での判断とアクションがしやすくなったこと。トラブル時の復旧を早めるとともに自己復旧率も上がり、機会損失も少なくなる。
また、XMF ColorPathには数値管理の結果をレポートとして書き出す機能がある。それを記録としてファイリングし、何か色調問題でトラブルがあった場合にそれを提示することで原因の所在を明確に示すことができる。
大橋 刷り出し短縮による損紙削減、時間短縮は、経営的観点から見ると大きなメリットで、システムの導入コストに見合うだけの印刷工程改善の有用性は明らか。この部分をこれからも訴求していきたい。
色見本スキャンで色合わせ
安倍 冒頭「プルーフの二極化」という話をしたが、我々のソリューションが「too much」なユーザーも存在する。そんなニーズに応えるため生まれたのが、色見本色合わせソフト「Real Match Assistant」だ。
これは、従来のカラーマネージメントとは少し違う考え方。色見本の現物をスキャンするシンプルな操作で、簡単にPOD等の印刷物の色を色見本に近づけることができるソフト。原稿データ(CMYK)を「Real Match Assistant」に読み込み、POD機付属のスキャナで色見本をスキャンすると、自動でその色見本用のプロファイルが作成される。このプロファイルを適用して出力することで、色見本に近似した色の印刷物を安定的に出力することが可能になる。
大橋 「Real Match Assistant」が現在対応するプリンタは富士ゼロックスの4機種に限定されている。これは、富士ゼロックス製プリンタのコントローラーそのものが、カラーマネージメントを意識した構造になっているため。詳しくは言えないが、他のプリンタでは同様の結果は出ない。
さらに、スキャナ付属の複合機プリンタが対象であるため、先日のpage2017でも「プロダクション向け上位機種への対応」について多くの問い合わせを頂戴した。現在、汎用スキャナで対応するバージョンを検討している。今後も市場ニーズを聞きながら開発を進めていく。
デファクトスタンダード「PRIMOJET」
安倍 「PRIMOJET SOFT/SOFT-XG」の新バージョンを発表した。
「SOFT V7.0」は、ウインドウズ10に対応したほか、GUIの視認性や処理速度が向上している。また、新たにPRIMOJET PRINTER PJ8050/6050でJapan Colorプルーフ機器認証を取得した。さらに近日発売の「SOFT-XG V5.8」では、塗工紙ベース紙のインクコントロール性の向上のほか、Japan Color、JMPA、Kaleidoの3つの業界標準にいち早く対応している。
さらに、今回はサポート面を強化。従来のサポート体制に、「ソフト不具合による出向費無償」「簡易CMSによるプロファイル提供」という2つのメニューを追加した「PRIMOJETフルサポートパック」を用意した。「サポートも品質のひとつ」と位置付け、訴求していきたい。
紙器や軟包装パッケージ分野へ
安倍 今後の方向性として、商業印刷から紙器や軟包装パッケージ分野へ事業領域を拡大しているユーザーが増える中、当社としてもこの分野における「色」のトータルソリューションを強化していく必要性を認識している。
まずひとつは、現在ある軟包装用プルーフシステムのデバイスの拡張。また、page2017では、インクジェット適性を与えたPRIMOJET用コートボールを参考出品した。また、今後は「本紙校正」に対するニーズも高まると見ている。
大橋 その意味からも、Jet Pressは平台校正に変わる本紙校正デバイスとして、その安定性と瞬発力が高く評価され、新しい校正分野として認知されつつある。大きなトレンドとして今後も注目していただきたい。